東沼神社(とうしょうじんじゃ)
- 加藤眞由儒
- 12 分前
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「川口にとってもいい神社を見つけましたよ」秘書からそう言われたのは、秋になってもなお暑さが残っていた昨年10月半ばのことでした。
時間ができると近隣の神社を参拝している秘書は、神様の間では「神社マニア」と呼ばれています。最近では埼玉県内にとどまらず、都内や群馬県まで足を延ばすようになりました。鳩ヶ谷氷川神社や草加神社も秘書の勧めで参拝した神社です。
その鳩ヶ谷氷川神社を訪れた際には、境内のポスターに「川口九社勾玉巡り」と書かれているのを目にしました。勾玉の形に点在する九つの神社を巡拝することで、生命の浄化と再生を願うという内容でした。その九社のうち、まだ参拝していなかったのが「東沼神社」だったのです。
【東沼神社(とうしょうじんじゃ)は埼玉県川口市の神社。創建年代は不明である。当初は「浅間神社」と呼ばれており、浅間信仰に基づく富士塚も境内に設けられている。興照寺が別当寺であった。1873年(明治6年)、近代社格制度に基づく「社村」に列せられ、1907年(明治40年)の神社合祀により、周辺の七神社が合祀された。当社が見沼田んぼの東に位置していることから「東沼神社」に改称した】(Wikipediaより)
秘書が最初に東沼神社を参拝したとき、境内の駐車場は雑草に覆われ、赤い鳥居も草木に埋もれてしまいそうなほどだったそうです。

「お参りしない人、犬猫は入れません」そんな立看板が立ち、さらに奥へ進むと、赤い輪が描かれた先に参道があるものの、そこにも「参拝目的以外、絶対にこれより入らないこと」「防犯カメラに写り、警察に届けた」といった、少々物々しい張り紙が目に入ったといいます。
秘書も内心びくびくしながら本殿へ向かいましたが、辿り着いた瞬間、その不安は一気に消え去ったそうです。石段の上には、落ち着いた木色の柱と、翠色の屋根が美しい曲線を描く拝殿が佇んでいました。背後の木々、青空、そして流れる雲との対比が、拝殿をいっそう幻想的に浮かび上がらせていたといいます。

右手の社務所で御朱印をいただけると知り、恐る恐る声をかけたところ、とても人の良い神主さんが応対してくださったそうです。ご祭神が木花咲耶姫(このはなさくやひめ)様であることから、拝殿の随所に桜の花びらが施されていること。かつては「浅間神社」と呼ばれていたものの、明治時代に周辺の神社を合祀し、「東沼神社」となったこと。今年は暑さのため、まだ草刈りが行き届いていないこと。正月三が日には秘蔵の絵馬を展示する予定で、ぜひ見に来てほしいこと。さらには、御朱印には桜の花びらを押し花にして、一枚一枚手間をかけていることなど、気さくに三十分近く語ってくださったと、秘書は感激していました。
加えて、川口市内で「鎮守の森」と呼べる場所は、ここ東沼神社と「峯ヶ丘八幡神社」しか残っていないこと、この拝殿は神奈川県の寒川神社と同じ建築事務所によるものだということも教えてくださいました。
「寒川神社」その名前を聞いた途端、秘書の胸が高鳴ったそうです。というのも、少し前に私が寒川神社の神様から、参拝に来るよう声をかけていただいていたからです。「もう少し涼しくなったら」と先延ばしにしていましたが、そのことを聞いていた秘書が、念を押されているように感じたのでした。
それからしばらく経ち、たまたま時間ができた折に秘書から改めて東沼神社を勧められました。東沼神社は、武蔵野線の東川口駅と東浦和駅の中間あたりにあり、川口市とはいえ、さいたま市との境にほど近い場所にあります。
今回は、雑草に覆われた駐車場ではなく、拝殿正面に位置する広い駐車場に車を停めました。コンクリート造りの鳥居の先には、「玉取り」と呼ばれる縁起の良い玉を踏む狛犬と、子どもの狛犬に手を添える親子の珍しい狛犬が、向かい合って鎮座していました。

右手には「見沼富士」と呼ばれる、こんもりとした小高い丘があり、「七合目」「八合目」と刻まれた石碑が立っています。かつて浅間神社と呼ばれていた名残として、富士塚信仰の跡が今も大切に残されていることがわかります。

御朱印をいただいた際にお話しした神主さんは、秘書が言っていた通り、とても人柄が良く、話好きな方でした。入口に貼られていた警告文を見るにつけ、このように寛大で心優しい方が、やむを得ずあのような措置を取らなければならなかった背景を思うと、やるせない気持ちになります。
拝殿でご挨拶をさせていただくと、ご祭神が木花咲耶姫様であるだけに、柱や壁、扉、ガラス戸に至るまで、桜の花が美しく咲き誇っていました。

「ようこそお越しくださいました」その声に驚いて顔を上げると、女神様が微笑んでいらっしゃいました。美しいというより、失礼ながら、とても可愛らしいお方です。富士山でお目にかかった龍神様と同じお色のお召し物をまとい、思ったより小柄で、ふっくらとしたお姿でした。私は即座に「木花咲耶姫様だ」と感じました。
「富士山からここまでは、ひとっ飛び。一瞬で来られますよ」そうお聞きし、やはり間違いないと確信しました。さらに「そちらの方は、前にもお越しくださいましたね。覚えておりますよ」と、秘書のことまで気遣ってくださいました。
「神社もそうですが、あなた様のお仕事も、さまざまな方が荷物を置いていかれます。ですから、たまには厄を落としてくださいね。寒川神社はとても良いですよ」ここでも、やはり寒川神社を勧めてくださいました。
東沼神社へ行こうと思い立ったその瞬間に、木花咲耶姫様が迎えてくださったことを、恐れ多くも、ただただありがたく感じました。霊感のない秘書のことまで、きちんと見てくださっていると感じられたことに、感激もひとしおでした。
みなさまも何となく足が向いていると思われるかも知れませんが、神様はきちんと、すべてを見てくださっています。
世界が平和でありますように。



