宇奈岐日女神社(うなぎひめじんじゃ)
- 加藤眞由儒
- 6 日前
- 読了時間: 6分
キリンさんと再会したのは、博多から湯布院まで運行している食堂車「或る列車」の発車30分前です。博多駅2階の喫茶店はかなり広々としていてわかりやすいはずでしたが、あまりに混雑した駅では落ち合うのも一苦労です。秘書が電話を駆使してようやく探し当て、喫茶店まで連れてきてくれました。
2年ぶりに再会したキリンさんは少しも変わらず、屈託のない笑顔は健在でした。
軽く近況を話した後、早速ホームに進みました。
予約のなかなか取れない食堂車に乗り込むのを皆さん楽しみにしているようで、かなり長い列ができていました。ホームの端から黄色い車両が徐々に近づいてくると歓声が上がり皆さん身を乗り出して動画を撮っています。憧れの列車と記念撮影をするために先頭車両は大混雑です。
車両は黄色というより金色の上半分で、下は黒地にやはり金色の唐草模様が施され、豪華な中にも上品さが溢れています。

入り口でチェックインすると目の前にはステンドグラスと格子のフローリング、丸いレトロの照明が迎えてくれ、眩しさに思わず目を瞑ってしまいました。私たちが案内された1号車はテーブル席となっており、4人掛けが3つ、2人掛けが5席です。2号車は雪見障子による仕切りを設けた個室席になっているようです。
白木のテーブルに格子をあしらった窓枠、おしゃれなテーブルクロスとカーテンが青い唐草をあしらった椅子のデザインとマッチしています。絨毯はやはり彩りのある唐草模様で、白い彫刻を施した天井が光り輝いています。銀色の四葉のクローバーがたまには三つ葉や五つ葉があったりすると係の方が説明されていました。
飲み物もシャンパンを始め全て飲み放題となっていて、料理に合わせてペアリングを楽しむことができます。最初に色とりどりのプチトマトのカルパッチョをシャンパンでいただき、2品目を赤ワインで楽しんでいた時に突然秘書が叫びました。「あ、終点の湯布院でレンタカー借りるんでした」慟哭に近い叫び声だったので私は思わず笑ってしまいました。秘書が最初にシャンパンを飲むところから知っていましたが、いつも運転のために我慢しているお酒なので、こんな機会に楽しんでもらいたいと思ったからです。

切り替えの早い秘書はさっきの騒ぎはもはや無かったかのように満面の笑みで幸せそうに飲んでいます。その姿を見て私は免許証を持ってきてよかったと思いました。
2年前に台湾にお邪魔した時には台湾の食堂列車に乗りました。その時は座席と食堂車が別でフルコースを食べながら途中太魯閣(タロコ)と言う観光地で1時間くらいハイキングをしたり、食堂車で美しい女性が胡弓を奏でたり、台湾の高山で栽培された貴重なコーヒー豆のレクチャーと試飲をしたりと盛りだくさんのエンターテイメント的な会でした。日本ではただただ豪華な車両の中で料理と会話を楽しみ、停車と言えば「カッパの駅」として親しまれている田主丸(たぬしまる)駅で地元の方がカッパ伝説を伝えてくださったくらいです。美味しい料理とお酒、懐かしい仲間との楽しい会話で約三時間夢のようなひと時はあっという間に過ぎてしまいました。
湯布院駅はとてもこぢんまりとして、有名な温泉地としては驚くくらい小さな駅でした。
レンタカー屋さんで手続きをして、ナビで宿を検索しても電話番号でも出てきません。仕方なく大まかな住所とGoogleマップを頼りに出発しました。またデジタルミラー車はまだ慣れていないので遠近感がなく手間取ります。3キロほどではありますが、細い道を左右に曲がり、アップダウンも激しくかなりの疲労です。道を間違えて何度も修正しながら何とか無事に到着しました。私も運転は10年ぶりくらいです。到着と同時に全身の力が抜けてしまいました。「緊張して酔いがすっかり覚めてしまいましたよ」切り替えの早い秘書は自分が酒を飲んで大騒ぎをした事などすっかり忘れているようです。
お宿は隠れ家のような作りでフロントからスタッフさんが丹精込めて育てた棚田と由布岳が見渡せます。年輪を見せている切株のテーブルが目を引き、和室では刈り取った稲で藁細工のお守りを作る教室も行われていて早速参加しました。あまり綺麗には仕上がりませんでしたが旅行の記念として今でも飾ってあります。ここではとてもゆったりとした時間が流れています。

ボイラーが故障して大浴場が何時間か使えなかったのですが、キリンさんの交渉と秘書の援護射撃のおかげで、ディナーのドリンクをサービスしてもらい2人で喜びを分かち合っていました。その日は旧暦の「十五夜」で月見円台ではお団子と日本酒を振る舞っていて、ぼやけた月を眺めながら話しが尽きる事はありませんでした。
翌日近くで有名な金鱗湖(きんりんこ)を観光しましたが、私はその近くにある神社から気を感じました。
【宇奈岐日女神社(うなぎひめじんじゃ)は、大分県由布市にある神社。式内社で旧社格は県社。
祭神は以下の六柱。「六所宮」別称はこれら六柱を祀る事による。国常立尊(くにとこたちの尊)、国狭槌尊(くにさつちのみこと)、彦火火出見尊(ひこほほでみのみこと)彦波瀲武鸕鷀草葦不合尊(ひこなぎさたけうがやふきあえずのみこと)、神倭磐余彦尊(かむやまといわれひこのみこと)、神渟名川耳尊(かむぬなかわみみのみこと)。一方『延喜式』神名帳に記される社名は「宇奈岐日女神社」であることから、当初の祭神はウナグヒメ(ウナギヒメ、ウナキヒメ)であったと考えられる】(Wikipediaより)途中漢字を入力するのも読みがなを入力するのもたいへんでしたが、神倭磐余彦尊は初代神武天皇、神渟名川耳尊は二代目綏靖天皇(すいぜいてんのう)の事のようです。
早速ご挨拶させていただきました。歴史を感じさせる鳥居には「縣社宇奈岐日女神社」と扁額が掲げられています。石畳の長い参道の先には可愛い感じの狛犬と灯籠があり、その先に赤い柱の楼門が美しい姿を見せています。

楼門をくぐるとさらに苔むした灯籠が並び、周りは杉の木が聳えています。台風で倒れてしまった杉の切り株も安置されていて古代にタイムスリップしたような空気が流れています。

「はるばるお越しいただいてありがとうございます。今は静かですが祭りの時はすごい人出となり賑やかですよ」と懐かしい言葉が直接心に入ってきました。国常立尊様です。
出雲大神宮や最近では寒川神社でもお会いしました。ここ九州でも御嶽山につながっているのだと思うと不思議な気がします。日本中の山を護っていらっしゃるのでしょう。その空気にパワーが溢れて身体中に染み渡ってきます。
しばらくその空気に身を置いたところにふと女神様が現れ「ここは昔は何もない場所でした。だからこそ私も心置きなく神様にお仕えできたのです」と仰いました。
紫の綺麗な十二単に髪はお団子に結っており、勾玉の首飾りをされていました。あとで調べたところ神社に最初から祀られていた宇奈岐日女様のようです。
とてもお優しそうで高貴なお姿は拝見させていただくだけで癒しとパワーを頂けます。
それにしても参拝客が多数いらっしゃる神社と違い、ここは人里離れた緑深き高台にまさに自然に溶け込むように神社も神様もじっとしてらっしゃいます。ここ湯布院は太古の昔から神々がこの自然と共に静かにあり続けています。
世界が平和でありますように。



