諸口神社
- 加藤眞由儒
- 10月1日
- 読了時間: 6分
更新日:10月2日
ここ数年仲の良い友人数名と夏はグランピングに出かけています。昨年と一昨年は栃木県鹿沼の山中にある施設を訪れました。粟野川に大きな吊り橋をかけ、電飾の輝きで夜はとても良い雰囲気になります。敷地の中にはサウナテントもあり、汗をかいたあとは水で流してから粟野川に飛び込み何十年かぶりに川遊びを楽しむ事ができました。近くの温泉で癒されたあとにテント付属の施設でバーベキューと花火を楽しみ、とても良い夏の思い出になりました。
今年は他の景色も楽しみたいと検索したのが今回お邪魔した西伊豆戸田(へだ)にあるグランピング施設です。お盆三連休の初日でかなりの渋滞が予想されましたが、ピークが朝7時と知り、その頃に川口を出発しました。
途中都内で友人たちをピックアップして、新宿トンネルを抜けて東名高速に入りました。
途中横浜あたりで渋滞となりましたが、思ったよりすんなりと進み、11時頃には沼津インターを出て、沼津港に到着しました。昔訪れた時に比べると土産物や飲食店がきれいに立ち並び、有名観光地のように様変わりしていましたが、昔の港町の面影は残っていて独特の雰囲気が漂っています。
20年以上前にお邪魔した天ぷらと海鮮の美味しいお店にお邪魔しました。新装開店したばかりなのか花が飾られていてとても綺麗になっています。昔はお年を召したお姉様たちがマイクで注文を大声で叫び、それが沼津港の活気を呼び起こし名物となっていましたが、今は広々としたお洒落な店内に静かな雰囲気が漂っていて、支店もあるのか思いのほか空いていました。
名物の円柱の形をしたかき揚げと、かさごの天ぷらは健在です。
みんなで検討を重ねて、それぞれ海鮮丼を注文して、かき揚げと生しらすをいくつか頼んでシェアしました。かき揚げは見た目より中が柔らかくふっくらして外はカリッと揚がっています。生しらすも自宅の街で食べるより遥かに新鮮で美味しかったです。
港で過ごすのは久しぶりで、食事の美味しさと港町のノスタルジックな雰囲気にどっぷりと浸って、かなり時間が経ってしまいました。そこから西伊豆まで降りてグランピング施設に向かうのですが、途中、岬の先端に神社があるのを知り参拝させていただきました。
西伊豆は海岸に道路が続いておらず、山の中のクネクネと曲がった道を登ったり下ったりを繰り返して進んでいきます。
そのうちに戸田港に着きました。川口の隣にも戸田市があり、(とだ)呼びますが、こちらは(へだ)になります。
そこからさらに細い道を進むと小さな海水浴場がありその先は行き止まりで駐車場になっていました。夏期限定の臨時駐車場のようで、神社に参拝するだけでも駐車料金がかかるようです。午後3時を過ぎたと言うことで、割引された料金を払い進むとその先はびっしり車が停まっていました。神社は岬の先端にあるので駐車している車の脇をどんどん進んでいきます。変わった形の灯台を抜けると神社の駐車場案内が見えましたが、満車と思ったので、他の車と同様に道路の脇に停めて参拝させていただきました。細い道の先に赤い鳥居があります。先に進むと道が広くなり、やはり空きが全くない駐車場と博物館の白い建物があります。その先に諸口神社の社殿が横向きに建っていました。
【諸口神社(もろぐちじんじゃ)】は静岡県沼津市戸田(へだ)に存在する神社。御浜岬(みはまみさき)の先端に東向きで所在している。正面の海沿いに対岸からも視認できる赤い鳥居が建てられている。祭神は元来は『延喜式神名帳』の記載から「もろき姫、国玉姫、橘姫」が祀られていたと推察され、現社名の「諸口」も「もろき」に由来されると考えられる。
女神ということもあり、古来から弁天と同一視され、漁民の崇敬を受けてきた。(Wikipediaより)
弟橘姫命(おとたちばなひめのみこと)と言えば、かの日本武尊(やまとたける)の妃で、東征の相模原から上総(かずさ)へ渡る際、海上の暴風雨を鎮めるために身を投げたと伝えられています。古事記や日本書紀にも記されており、日本武尊の物語でも重要な場面です。
文京区の湯島に日本武尊が滞在した時、妃を慕われる心を憐れんで日本武尊と妃を祀ったとされる「妻恋神社-つまこいじんじゃ」があります。とても小さな神社ですが、その後稲荷明神が合祀され、江戸時代には「妻恋稲荷-つまこいいなり」と呼ばれ、王子稲荷神社と並んで参拝客が多かったそうです。
妻恋神社と言えば埼玉県大宮駅の側にもあり、狛犬の代わりに狐を両側に配した小さなお社がありました。また夫の危機を自身の身を投げ打って救った妃を祀る神社は各地に存在し、千葉県茂原市の「橘樹神社-たちばなじんじゃ」や神奈川県横須賀市の「走水神社-はしりみずじんじゃ」などが有名ですが、ここ諸口神社も祀っているとは初耳でした。
右回りに拝殿の正面に立つと石の階段が続いています。狛犬の代わりに立派な灯籠が立ち並び、ソテツか椰子の木が南国の海辺を思わせます。拝殿の柱の上部に狛犬を発見し、神域を守ってくださっている事がわかり安心しました。

そこから、また木の階段になり自らの手で引き戸を開けると、目の前に場違いなほど派手な紅白の鈴緒があり、その上には鈴(正式には本坪鈴-ほんつぼすず)の代わりに、沼津市の指定文化財に登録されている鰐口(わにぐち)が参拝者を清め、神様への合図として用いられています。こんな貴重なものが簡単に私たちに使わせていただけることが、ありがたいと同時にセキュリティの面で少し心配になります。賽銭箱から覗く拝殿は天井が屋根裏部屋のような造りでしたが、ガラス画が多く明るい印象でした。正面ガラス戸の両側上部には昔の合戦のような絵がかかっています。

書き置きの御朱印は何と拝殿の中にあり、賽銭箱の後ろを通ると、三方の中に黒と金で書かれた2種類の御朱印が置いてありました。日付は自身で入れるようになっています。
こちらも参拝客の善意に任せたもので、信頼されているからこそ身が引き締まる思いがします。
参拝を終えて小舟ヶ浜に出たとき、真っ赤な鳥居の向こう側に陽の当たった真っ青な空と海、翠の山々の眩い景色が視界に飛び込んできました。影になったこちら側がまるで結界の張られた神界のような感じがします。船着場のコンクリートの先は何も遮るものがなく、先端に立つと360度が紺碧の海でまるで絵葉書のような絶景です。

周りを見渡すと、シュノーケリングしている方や泳いでいる方、磯遊びをしている方様々です。ここ小舟ヶ浜は透明度抜群の海で、有名なダイビングスポットでもあるようです。真夏の海水浴場は久しぶりですが、その解放感と皆さんの躍動感で自分までワクワクしてきます。そして振り返ると神社を守る鳥居と木々がまるで別世界のように静まり返っています。まるで祭神の弟橘姫命が私たちの安全を神界から見守っていらっしゃるようです。
その時に私は龍神様がこの神社に訪れていた過去の映像をはっきりと見ました。下から見上げるとまるで水族館のイルカショーのように白い腹に青い背が見え隠れして、紺碧の空や海と相まって赤い鳥居を更に際立たせています。そして何度も猛スピードで旋回しこの神社にふわりと無重力で降り立ったのです。それだけでもここ諸口神社がとても重要であるとわかります。
運が良ければ小舟ヶ浜ブルーと富士山と赤い鳥居が一緒にフレームに納まるかも知れません。

その時に、龍神様がこの岬の安全を守っていらっしゃり、またかつて命をかけて安全を祈願した神様がいらっしゃる事を思い出し、今日の海を含めた日本の安全を心から感謝したいと思っております。
世界が平和でありますように。